発達障害(児童・思春期精神科)
発達障害(神経発達症)とは、発達の度合いに偏りがあるもので、いくつかの診断分類を包括した表現です。含まれるものとしては、知的能力障害(知的障害)、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(学習障害/LD)、協調運動症、チック症、吃音などがあります。発達障害は脳の働きの違いからくる、物事の捉え方、行動パターンの違いで、日常生活に支障をきたしている状態を指し、障害名が同じでも特性の現れ方が異なる場合や、ほかの発達障害や精神疾患と合併している場合もあります。
発達障害は特性のある人とない人が、はっきりと分かれているわけではなく、グラデーションとなっていると考えられています。そのため、発達障害を脳の障害ととらえるよりは、個性や特性などの「違い」ととらえ、対応していきます。
また、子どもの不登校やひきこもり、ゲーム依存症などの背景に、発達障害が潜んでいる場合もあります。発達障害によって学校などでうまくいかないことにより、抑うつなどの「二次障害」を招いてしまう場合もあります。子どもの成長や将来にとって、重要な問題となりますので、発達障害を正しく理解し、適切な対応をしていくことが大切で、学校生活や社会活動をよりスムーズに送っていけるよう、対応していく必要があります。
自閉スペクトラム症(ASD)について
発達障害の一つである自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)は、これまで自閉症、アスペルガー症候群など、様々な名称で呼ばれていたものを、本質はひとつの障害だととらえ、自閉スペクトラム(連続体)と呼ぶようになったものです。さらにそのほかの広汎性発達障害(PDD)も含まれています。
自閉スペクトラム症には大きく二つの特徴があります。ひとつは対人交流のコミュニケーションの質が異なっていること、もう一つはパターン的な行動があることです。
人とのコミュニケーションが苦手で、相手の気持ちを理解することが難しいため、上手く対人関係が築けず、一人でいることを好む傾向にあります。また興味を持つ対象も非常に限定的で、興味があるものに関してはそれだけについていつまでも話していたり、膨大な知識を蓄えていたり、またどんな時も自分のルールや特定の手順に従うといった面があります。
よくみられる行動としては、人と眼を合わせない、身振りや手振りで伝えることが苦手、相手の言葉をおうむ返しにする(エコラリア)、言葉による指示が理解できない、などがみられます。
自閉スペクトラム症の子供はいじめられやすいということがわかっています。また思春期では、自分と他者との違いや、社会にうまく溶け込めないことなどから精神的に不安定になり、不安・うつ症状の合併など「二次障害」を引き起こす場合もあります。なるべく早期に気づき、専門の医療機関や自治体の窓口に相談するなどし、適切な対応を取っていくことが大切です。
自閉スペクトラム症は個性の一種であり、置かれた環境によって成功する人、逆に孤立して生きづらさを感じる人もいます。早期に発見することで、ご家族を含め周囲の接し方も変わり、うまく社会生活が送っていけるようになることが期待できます。また、その後も継続的な発達支援を行っていくことが重要です。発達支援は少人数のグループで遊んだり作業をしたりし、集団でのルールやコミュニケーションなどを学んでいくものです。また、親・養育者へのサポートもとても重要になります。
症状によって生活に支障をきたしている場合や、ほかの病気を合併している場合には、お薬による治療を行うこともあります。自閉スペクトラム症の特徴をお薬によって根本的に治療することはまだ難しいと考えられていますが、お薬によって症状が落ち着くことにより、生活が送りやすくなり、発達支援もスムーズに行えるようになることが期待できます。
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