こどもの心の問題(児童・思春期精神科)
児童・思春期精神科では、お子さんのこころの問題に関し、豊富な診療経験と高い専門性に基づいて、ひとりひとりの個性を尊重した診療を行ってまいります。必要に応じて、学校の先生とも連携を取って、どうすれば辛くない生活を送っていけるか、その改善方法を探っていきます。まずは一度、ご相談ください。
小学生の心の問題
低学年
この時期では、親や先生の言いつけを守るなど善悪の判断、社会のルールの理解が始まり、「してはいけないこと」を意識するようになります。ただし、基準は親や先生にあり、あまり自分で判断することはありません。また、特定の友だちというよりは、公園などで一緒になった子と遊び、集団活動といってもとくにまとまりはなく、それぞれが思い思いに遊んでいる状態です。
3~4年生
集団での生活では自分たちでルールを作り、主体的に関わっていくといったことができるようになり、友だちとの連帯感を強め、集団での行動も多くなります。大人の見ていないところで仲間と行動したり、親や先生などの言うことを聞かなかったり、口答えをすることもあります。抽象的な概念の理解ができはじめ、その場にないものを創造することもできるようになりますが、善悪の判断が未熟なため、いじめが始まる場合もあります。
高学年
この時期は思春期の入り口にあたり、友人関係のトラブルや親や先生など大人との衝突、また学習面の遅れなど悩みが増える時期でもあります。身長も伸び、性差もはっきりして、男子も女子も相手を異性として意識し始めます(女子の方が男子より早熟な傾向があるとされています)。抽象的な思考が深まって授業内容も高度になり、また学校では学級会や委員会などで集団を運営するようになります。
発達障害を持つお子さんたちが、自分と周囲との違いに気づくのがこの時期で、それによって抑うつや自己肯定感の低下などの二次障害が起きたり、不登校やネット依存といった問題も現れたりしてきます。こうした問題に早期に気づいてあげて、対応していくことが大切です。
中学生・高校生の心の問題
思春期と呼ばれる時期のうち、中学生がほぼ前期、高校生が中期にあたります。第二次性徴の訪れとともに、体の発育は大きく、大人らしい体つきになります。それに伴って、こころの面でも自分自身に目を向けるようになります。男女の身体的・心理的な違いも顕著になり、異性に対する意識も高まります。
これまでは親や先生からの評価を受け入れてきた状態から、急速に親離れが進み、自分自身の視点から他者との比較を行って、客観的に自分を把握しようとします。また他者の目から自分がどう見えるかということを考えられるようにもなります。その結果、劣っている自分の側面を意識し、自己評価が低下しがちになったり、こんな風にみられたいという理想の自分とのギャップに悩んだりします。
さらに将来的な自立を見据えて、「自分とは何か」「自分は何をしたいのか」「自分は何を求めているのか」というような“自分らしさ(アイデンティティ)”を探し始めていく時期でもあります。アイデンティティの追求を通した成長は、思春期前期から始まり、友人との関係や恋愛、職業の選択などを通じて確立していきます。
また思春期は医学的には、自制心や感情のコントロールなども司る脳の前頭前野の成長が、他の部位の成熟と比べると未熟であり、相対的に情動や意欲を司る大脳辺縁系の活動が高まる傾向にあります。そのため危険な行動や、飲酒、喫煙、薬物などに興味を持ったり、SNSに不適切な行為をアップして自慢したりと、リスクの大きな行動をとるようになったりします。また自殺願望が顕在化したり、リストカットなどの自傷行為がみられたりする場合もあります。この時期は行動力も大きくなるため、学童期に比べ問題が大きくなってしまうことも少なくありません。
思春期はこれまで13歳くらいから22歳くらいまでとされてきましたが、身体の成長・発育が加速していること(女子では10歳前後で初潮をみることも少なくありません)で思春期の発現が早まっていること、一方で社会において高度な知識や技術が必要となったり、独立と責任を求められる年齢が高くなったりしていることから、現在では思春期は10歳~30歳がひとつの目安となっています。
現代は身体の成熟の速度に比べ、心の成熟がこれに伴っていないことも思春期における問題です。さらに身体や心の成長には個人差があるため、心の問題に関しては慎重に見極めていくことが大切になります。また統合失調症や双極性障害、うつ病、不安障害など、多くの精神疾患は思春期が好発年齢となっています。